PER(株価収益率)とは?株価が割安かを見極める基本指標を解説
概要
PER(ピーイーアール、Price Earnings Ratio)は、株価が企業の利益に対してどの程度の水準にあるかを示す指標で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。 株価が割安か割高かを判断する際の基本的な分析指標であり、投資家が企業価値を見極めるうえで欠かせません。
計算式は非常にシンプルで、 PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS) で求められます。 たとえば株価が1,000円で、1株当たり利益(EPS)が100円なら、PERは10倍になります。 この「10倍」という数値が、投資家にとって割安か割高かを判断する基準となるのです。
PERの基本的な考え方
PERは、投資家がその企業の利益に対してどれだけの株価を支払っているかを示します。 PERが高いほど、投資家はその企業の将来成長を高く評価していることを意味します。 一方、PERが低ければ、現状では割安または成長期待が低いと見なされる傾向があります。
ただし、単純に「PERが低い=割安」とは限りません。 成長性が高い企業は利益の拡大が見込まれるためPERが高くても妥当な場合があります。 逆に、業績が悪化して利益が一時的に減少している企業は、見かけ上PERが高く見えることもあるため、総合的な判断が重要です。
PERの目安と業種ごとの違い
PERの適正水準は業種や市場環境によって異なります。一般的な目安としては以下の通りです。
- PER 10倍以下:割安圏。利益に比べ株価が低い水準。
- PER 10〜20倍:標準的な水準。
- PER 20倍以上:割高圏。将来の成長を織り込んだ株価。
例えば、成熟産業(銀行、鉄鋼、電力など)はPERが10倍前後でも妥当とされる一方で、 テクノロジーや医薬品などの成長企業ではPER30倍以上が一般的です。 つまり、「業界平均と比べてどうか」を見ることが、PERを正しく活用するポイントです。
PERの計算例
実際に計算してみましょう。
企業A:株価1,500円、EPS=100円 → PER=15倍 企業B:株価3,000円、EPS=50円 → PER=60倍 企業C:株価800円、EPS=80円 → PER=10倍
この場合、企業Cが最も割安に見えます。 しかし、企業Bが急成長企業で将来の利益拡大が期待できるなら、PER60倍でも投資対象になり得ます。 このように、PERは単独ではなく、成長率や業績トレンドと併せて評価することが重要です。
PERの活用法
- 割安株の発掘
業界平均よりPERが明らかに低い銘柄を探すことで、割安な投資先を見つけやすくなります。 - 同業他社比較
例えば同じ業種の企業AがPER10倍、企業Bが20倍なら、Aが相対的に割安と判断できます。 - 市場全体の評価を把握
日経平均やS&P500など、指数全体のPERを見ることで市場全体が割高かどうかを把握できます。
PERと他の指標との違い
PERとよく比較される指標に「PBR(株価純資産倍率)」があります。 PERが「利益」との関係を表すのに対し、PBRは「純資産」との関係を表す指標です。 PERが高くても、PBRが低い場合は資産的に割安という見方も可能です。
また、「ROE(自己資本利益率)」や「EPS(1株当たり利益)」などと併用することで、より正確な企業価値の評価ができます。
PERの注意点
- 赤字企業はEPSがマイナスのためPERが計算できない
- 一時的な利益変動でPERが大きく変わる
- 将来の成長を織り込んだ高PER銘柄は調整リスクがある
したがって、PERを利用する際は過去数年の平均値や業界水準と比較することが推奨されます。
まとめ
PER(株価収益率)は、株価が利益に対してどの程度の水準にあるかを示す基本的な評価指標です。 投資初心者は、まずPERの計算方法と目安を理解することで、株価の「割安・割高」を判断する基礎が身につきます。 一方、上級者はPERを他の指標(PBR・ROE・成長率など)と組み合わせ、総合的に企業価値を評価することが重要です。
PERは万能ではありませんが、「投資判断の出発点」として非常に有効なツールです。 株式投資の基本を押さえる上で、最初に理解しておくべき重要な指標の一つといえるでしょう。
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